一帯一路と海洋国家の戦略

中国が一つの長期戦略として一帯一路戦略を組んでいる。

一帯一路とは、2014年11月に中国で開催されたアジア太平洋経済協力首脳会議で、習近平中国国家主席が提唱した経済圏構想である。【一帯一路】の建設と地域の開発・開放を結合させ、新ユーラシアランドブリッジ、陸海通関拠点の建設を推し進める。その過程で、諸国の経済不足を補い合い、インフラ投資を拡大するだけではなく、中国から新興国への経済援助を通じ、中国を中心とした世界経済圏を確立すると言われている。

赤ルートをシルクロード経済ベルトと称す【一帯】、青ルートを21世紀海上シルクロードと称す【一路】を指す。


まずここで注目しなければならない点は、中国が【要所】として抑えている国家に対しては、中長期戦略的に必ず中国は友好国として組み入れなければならない点である。

貿易友好国である「ドイツ」

アフリカ大陸鉄道を抑える「ケニア」

社会主義大国である「ロシア」

もともと大陸国家である中国は、同様に大陸国家であるドイツ、ロシア、ケニアとは手を組みやすい。そのため、比較的に友好国として機能し、そこを拠点軸として活動の幅を広げるだろう。

一方で、マレーシア、インドネシア、インド沿岸部などを【一路】として協力体制に組み入れるのは厳しい。

国家の大半を陸で囲まれる大陸国家と国家の大半を海で囲まれる海洋国家は、思想や生活スタイルが異なるため、対立しやすいためだ。そのため、南沙諸島埋め立てといった強硬スタイルを取らざるを得ず、他国の海洋国家の反発は必須だろう。ここ最近では、同じく海洋国家である米国が南沙諸島への介入を進めており、ここに日本の介入が加われば中国の【一路】進展は望めない。


ここでダークホースとなるのが、大陸国家とも海洋国家分類されないギリシャやイタリアなどの半島と位置づけされる国家の存在である。

中国の【一帯一路】の国家戦略の組み入れで、ギリシャはイタリアに続く海の要所として2008年頃からピレウス湾などへの資本参加を続け、現地の住民との対立を続けながらも、受け入れ態勢が整いつつある。

現在ギリシャはデフォルトを控えてピンチではあるが、中国にとっては現状を静観している。ホワイトナイトとして、ギリシャを融資し、【一路】の足掛かりとして抑え込みたいと考えるだろう。

当然、その中国の戦略を指を加えて米国が見ているわけではない。

米国が中国の一帯一路の対抗策として推し進めているのが、TPPである。

TPPは米国と日本を中心とした海洋国家の経済圏の構築を意味する。TPPではISDA条項もあり反対派の声が多数だが、対中戦略として考えると構築は必須な戦略であると思う。何も手を打たなければ、粛々と中国の戦略に飲み込まれるからだ。

また、TPPを上回る経済圏としてもう一つtrade in services agreement(TISA)がある。これは、中国を中心としてBRICSを経済圏から締め出す戦略である。この戦略を実行する場合には一つ要件が必要である。

それは、イタリア半島、バルカン半島(ギリシャ)ではもう一つの半島、つまり朝鮮半島が、海洋国家ベースに組み入れられるのか、大陸国家として組み入れられるのかという点である。


現在、韓国は中国寄りを鮮明化しているが、北朝鮮との絡みも含めて改めてどちらの陣営に組み入れられるのかという代理闘争が起こる可能性が高い。

つまり、中国が要所として抑えている、「イラン、トルコ、ウクライナ、インド、マレーシア、インドネシア」は経済戦争のターゲットと成り得る点、米国・日本の海洋国家の要所として抑えられるべき、「朝鮮半島」が今後経済戦争のターゲットと成り得る点は地政学的観点から読み取れるため、同国に投資をする際はショック安後にするのが得策だろう。